• インタビュー 器デザイナー 田中恒子さん
  • 街の探訪記 代々木上原

インタビュー

レストランイメージ

田中さんの器で食事がいただけるレストランも併設。

ディスプレイイメージ

季節の花々を活かした美しいディスプレイ。

器イメージ

春には桜モチーフの愛らしい器が人気。

器を通して、暮らしを愛する

器デザイナー 田中恒子さん
服飾デザイナーを経て、器のデザイナーとなった田中さん。
日々を彩る器にかける思い、そして
お店のある代々木上原の魅力をお聞きしました。
洋服をコーディネートするように、器を楽しむ。

「もともと服飾のデザイナーをしていたのですが、28年ほど前にレストランを開くことになり、そのために器をオリジナルで作るようになりました。服は身につけるものですが、器は口につける、もっと暮らしに近いもの。食事をとる器が気に入ったものだとご飯もおいしくなるし、食卓の会話もはずみます。食事の時間が楽しいと、夫婦も子どもも仲良くいられる。だから、日々の食事に使う器はとても大事だと思うんです。器は買い方が難しいとおっしゃる方もいるのですが、自由な発想で使えばいいんです。例えばコーディネートに関しても洋服と同じ。1つのワンピースにスカーフやブローチでアクセントをつけるように、シンプルな器に個性のある小さな器を組み合わせてみたり。器で生活がもっと楽しくなればいいなと思いながら、日々デザインしています」

自然を感じさせ、食卓に想い出を運ぶ器たち。

「器に関して、一切の妥協はしません。考案から商品化まで、10年かかるものもあります。器の色から形まで、自分が本当にいいと思うものが出来るまでは商品にしないんです。基本的には、自分があったらいいな、と思うものを作ることが多いです。例えば、焼き魚を食べているときにもっと美味しく食べられる器を作りたいなあ、と考えて葉っぱモチーフの器を作りました。器以外のことを考えているときにアイデアが浮かぶこともあります。例えば、桜のことを考えていて、小さい頃のお花見や夜桜を見たことなど思い出して、たくさんの記憶の中から私の思う桜を表現しようと器をデザインしました。私の中の桜の記憶と桜を見た時の気持ちを器にして、それを使うお客様がまたそれぞれの桜の想い出を重ねて食事をしてくださる。器にはそんな楽しみ方もあるんです」


落ち着いた生活を楽しめる、幸せな代々木上原。

「代々木上原に店を構えてもう15年になります。以前は百貨店でお店を持っていましたが、自分の器で食事ができるお店も持ちたいと思い、代々木上原にやってきました。都心からほど近く、とても便利な場所にも関わらず、自然が豊かでとても静か。四季折々にいろんな表情を見せる街ですが、特に夏の夕暮れ時が好きです。解放的な表情で犬の散歩をする人やはしゃぐ子どもたちを見ていると、ここは幸せに生活を楽しめる町なんだなあとしみじみ感じます。お店のお客様も長年上原に住んでいらっしゃる方が多いですね。上原で生まれ育ち、一度は家族の元を離れて別の場所で一人暮らしをしていたけれど、結婚を機にまた住環境のいい上原に戻っていらした方もたくさんいらっしゃいます。地に足のついた、落ち着いた生活をするには本当に適した場所なんです」

住民の高い感度が、ハイクオリティな店を作る。

「素敵なお店が数多くあるのも、代々木上原のいいところです。レストランはもちろん、器などの生活雑貨やカフェ、スイーツのショップ、パンやさんなど、どこも質が高くセンスのいい店ばかり。おそらく住んでいらっしゃる方もセンスがよくいいものを知っている方が多いので、自然とお店のクオリティも上がるのだと思います。小さな店構えの何気ないお店でも、入ってみると驚くほどお洒落で美味しかったりと、嬉しい出会いが毎日のようにあるんです。可愛いブーケを頼めるフラワーショップがあったり、おもたせに最適な品のいいスイーツがすぐに買えたり、他の場所に行かなくても上原だけで十分満足できます。古賀政男記念館や白寿ホールでクラシックなどの質の高いコンサートも聴けるのも、大人の知性を感じさせる上原らしい部分ではないでしょうか」

店内イメージ

自然の光が器を優しく照らす店内。

器イメージ

花をモチーフにした器は、置くだけで食卓が和む。

店名:亘(kou)
住所:渋谷区上原1-1-19
電話:03-3485-8097
HP:http://www.koukou.co.jp/


赤沼直美さんイメージ

器デザイナー 田中恒子さん

1959年東京生まれ。立教女学院卒業後、文化服装学院でデザインを学び、服飾デザイナーとなる。その後、土のぬくもりと、時代を超えた器の伝統に魅せられ、器の制作・デザインをはじめ、生活全体に遊び心のある演出を提案するコーディネーターとして広く活躍。古くから伝わる伝統的な和と遊び心あふれる小粋な洋をとりまぜた、使い方にとらわれない、温かみのある陶器をデザインしている。