―森田さんは関西と東京、さらには海外を拠点に活躍されているわけですが、それだけ東京という都市を客観的にご覧になっていて、東京の魅力とはどんなところにあるのでしょうか。
「大阪や神戸でも中心地と言われる地域では、商業地区と住宅地域が意外に離れてるんですね。しかし、東京というのは商業地域と住宅地が隣接していて、そういう地域が都内にはたくさんあるのが特徴だと思っています。たとえば三宿だったら三軒茶屋や渋谷も近いし、もっと行くと代官山や恵比寿、さらには西麻布、六本木という商業地域がひかえている。住宅地と商業地域が隣接していることで、とても楽しい街になっています。それが東京の魅力だと思います」
―たしかに商業地域が点在していて、その隙間に住宅街があるというのが東京の特徴ですね。
「だからどこかにご飯を食べにいくとか、仕事でミーティングするにしても場所で悩まないのが東京のよさですよね。しかも住宅地と商業地域の間には緑も多い。東京は住みにくいという話もありますが、僕個人としてはこんな住みやすい街はありませんね。世界中探しても、こんな都市ってないと思いますよ。街に活気があって、暮らすための環境も整っている。静と動がリンクしていて、自分のスタイルによって住みたい地域を選べるし、いろんな刺激があるのも魅力だと思います」
―森田さんは商業施設や集合住宅などで個性的なデザインの優れた作品をおつくりになっていますが、そのアイデアの発想はどこからくるのでしょうか。
「いろんなプロジェクトを同時に数多く抱えていて、締め切りが迫るとどうしようかなっていつも悩んでいるんですが(笑)、ひとつだけ言えるのは、店であっても住宅であっても1軒1軒すべてがオートクチュールだということなんです。その地域の立地条件を考えて、どんな人たちが利用するのか。海外のホテルならばどこの国で、地元の人相手なのか観光客相手なのか、一つとして同じケースはないわけですよね。同じ例がないということは、そこにしかないオリジナリティをどうやって出すかが大切です。引き算じゃないですが、いらない部分を削っていって必要な部分だけ残していく。いい意味での差別化をどうつけるかをいつも考えています。だから奇をてらうような発想はあまり考えないですね」
―そこに住まわれる方の人物像もお考えになりますか。
「ええ、そこが重要ですね。こんな人物に住んで欲しいと勝手に想像して、映画のワンシーンじゃないですが、頭の中で住む人たちのことを考えて、こういうファッションを着て、こういう部屋のここに座って、食事をしてベッドに入ってというようにつなげて考えていきます。どういうことを彼らが望んでいるか、自分なりにストーリーをつくっていくわけですね。もしかしたら、それは僕自身なのかもしれませんが、自分がその空間に行ったら、楽しむためにはどんなデザインがいいのかなって。だからマンションだったら尖ったピカピカのデザインではなく、温かみのあるオーソドックスなものをつい求めてしまいますね」
―一般住宅と商業施設とでは考え方が違う?
「住宅と商業施設では僕の場合は明らかに違いますね。商業施設というのは週に1回とか月に1回ぐらい訪れる場所ですから非日常な空間ですよね。しかし、住居というのは人間が暮らす場所で極めて日常的な空間なわけですから、考えかたも180度違ってきます。その日常の中でのセンスがある部分をどうユーザーに伝えていくかが大切だと思っています
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