中杉通り
JR中央線・快速で新宿まで9分の阿佐ヶ谷。この街は、隣接する高円寺や荻窪とともに、〈都心〉と〈郊外〉それぞれの魅力をあわせ持ち、いつの時代も個性豊かな都市文化を育んできた。住宅地としても魅力満載である。それを〈中央線文化〉と呼ぶ人もいる。阿佐ヶ谷駅が開業したのは大正11年、その翌年に関東大震災は起きる。
被災激しい都心から逃れるように、当時は長閑な郊外だった阿佐ヶ谷界隈に多くの文人たちが移り住み、文化の香り豊かなコミュニティを築いていく。この界隈が「阿佐ヶ谷文士村」といわれた由縁である。近代日本文学を創出した若かりし頃の川端康成、太宰治、井伏鱒二らの創造へのエネルギーは、いまもこの街に息づいている。
航空写真(2019年3月撮影)※
中杉通り
Gelateria SINCERITA(徒歩1分/約80m)
コンコ堂(徒歩4分/約270m)
マンションや一戸建てなどの住宅設計を多数手掛ける。住民同士の交流を活性化するコミュニティデザインを提唱。日本大学理工学部・大学院、文化学園大学で長年教鞭をとる。
阿佐ヶ谷の街の魅力を具体的にひもといてみよう。中央線・快速を利用した都心への通勤・通学のフットワークの良さは言うまでもない。この街のアイデンティティは、やはり阿佐ヶ谷文士村コミュニティに端を発している。その名残が、書店や古本屋、レトロな老舗喫茶店の多さであろう。名曲喫茶にジャズ喫茶、それに新感覚のカフェも増えていて、喫茶店・カフェ文化はいまもなお健在である。現代のクリエーターをめざす若者たちは、そのカフェでコンテンポラリーなアート談義に花を咲かせているのではないだろうか。その実践の舞台が、ライブハウス「阿佐ヶ谷ロフト」やレトロな映画館「ラピュタ阿佐ヶ谷+小劇場」のようだ。60~70年代、この界隈はフォークソングに象徴される若者のサブカルチャーのメッカだったこともある。またこの街は、街をあげてのイベントが多い。そこにも文士村コミュニティのDNAが垣間見える。地元の伝統的なお祭りはもちろん、毎年10月にはジャズフェスティバルが開催され、街中にジャズが鳴り響くという。阿佐ヶ谷七夕祭りや神明宮境内の骨董市は良く知られていよう。さらに、駅前大型店と共存する多くの商店街が、それぞれ独自のイベントを街のそこかかしこで開催している。それが、街のシンボル〈中杉通り=ケヤキ並木〉を都市軸にして、閑静な住宅街が広がる阿佐ヶ谷の街を育み、緑豊かなこの界隈の安心と安全、暮らしやすさの源になっているように思う。
現地概念MAP
中杉通り
駅周辺には、高層のビルやマンションが建ち並び、公共施設や大型店舗が軒を連ねている。「ピアース阿佐ヶ谷」は、駅北口から徒歩8分、二つのアクセス・ルートをもつ。まず〈松山通り=商店街〉ルートだが、阿佐ヶ谷は商店街がとても多く連なり、実際それら商店街を渡り歩いていくかのようなアクセスになる。北口駅前の細い路地の赤提灯街「スターロード商店街」を横目に、天窓から自然光が注ぐ「北口アーケード街」を抜けると松山通りに出る。この通りは、「阿佐谷商和会」から「松山通り交友会」に途中で変わる2つの商店街からなり、レトロな店や新感覚の店が入り交じり、程良いスケール感と人通りが心地よい。「ピアース阿佐ヶ谷」は、後者の商店街の途中にある。そして、もう一つのルートが、阿佐ヶ谷を南北に貫く〈中杉通り=ケヤキ並木〉である。この通り沿いには、名刹「世尊院」と広大な境内をもつ「阿佐ヶ谷神明宮」が隣接してあり、この界隈に歴史の趣を与えている。有名な映画の舞台にもなったこの見事なケヤキ並木は、総数270本、全長1.5kmあるという。この緑のトンネル、初夏には新緑、秋には紅葉と、四季折々に市民の心を和ませてくれている。
真っすぐな〈中杉通り〉とそれに寄り添う〈松山通り〉。それらをつなぐ道路の1本を前面道路にして「ピアース阿佐ヶ谷」はその姿を現わす。この辺りは、壁を寄せ合うように低層建築が多く建ち並んでいる。「ピアース阿佐ヶ谷」の建設で、この街並みをいかに美しくリノベーションするか、それが開発テーマでもあったという。
まず、建物をセットバックさせて道路空間を広げ、都市のポケットパークをイメージした前庭の実現。比較的大きな壁面となるファサードは、新たな景観そのものになることから、水平と垂直からなる端正なかたちと自然素材イメージをデザイン指針にし普遍性を求めたという。
外観完成予想CG
外観完成予想CG
『阿佐ヶ谷を愛する多くの人たちに永く住み継がれるために・・・時代に左右されない普遍的な美しさへと昇華した』建築と設計者は語る。そのために採用した外観ファサードの仕上げが「杉型枠打ち放しコンクリート」であり、「木目調のバルコニー天井」だという。また1階エントランス基壇部の仕上げが御影石であることからも、街並みの構成要素としてのコンクリート、木、石という普遍的な自然素材イメージへのこだわりが伺える。
専有面積:54.07m²
住戸配置概念図
快適な都市生活を実現するコンパクトな居住空間とはどういうものだろう。上図の「住戸配置概念図」を見れば、その特徴がよくわかる。まず、一般マンションのような〈外廊下〉型ではなく、シティホテルのような〈内廊下〉型である。〈内廊下〉型は、一度マンション内に入るともう外気に接することはないから、気候や季節に左右されず、空間演出が可能で、何よりもセキュリティ性能が高い。単身女性も安心して暮らせる。次に、採光・通風や室内空間の広がりにも貢献する〈角住戸の多さ〉であり、その割合は総住戸数の約70%もある。さらに〈住戸タイプ数の多さ〉である。総住戸数37戸に対して間取りが16タイプもあるというから、多様化する都市生活のニーズに大抵は応えられるに違いない。左図の「B-type」住戸間取りを見てみよう。玄関を入るとコンパクトにまとめられた水廻りの床仕上げが一体化され、廊下も短い。オーソドックスな間取り構成だが、各居室も収納もきれいな形にまとめられ、過不足なく実に合理的である。さらに間取り変更のメニュープランが用意されているというから嬉しい。都市に美しく暮らすための合理的な住まい、それが「ピアース阿佐ヶ谷」である。
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ぜひ皆様も一度足をお運びくださいませ。
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